#97 思考のスライド
たとえば。以前に「7枚目の属州問題」について書きました。
7枚目の属州を買って相手にターンを回したとき、そのターンで相手が8枚目の属州を買って逆転される可能性があるのなら、そもそもその7枚目の属州購入は自らの負けを決定する行為である、という内容でした。
その後、もしこれが1ターンに属州2枚買える・獲得できるのが当たり前のデッキを組めるゲームであれば、買ってはいけないのは7枚目でなく、6枚目になるはずだ、という内容のことを書きました。
「状況によっては7枚目の属州を買ってはいけないんだ」ということだけを丸暗記しただけでは、この6枚目を買えないような状況に気付かず、うっかり買ってしまって負けることになるでしょう。
「買ってはいけない属州」は理解できたとして、それは必ずしも7枚目にだけ起こる問題ではないんだ、1ターンに2枚ずつ属州が減るなら残り2枚にして相手にターンを回すと負けるんだよ、と応用できる人とできない人がいると思います。できる人であれば、#88は読まずとも理解できていたことでしょう。
覚えたことをそのまま別のことに応用できるのなら、何か一つを覚えただけで三つも四つも覚えたのと同じことになるんですよね。
買えないカードはなんですか
先日の実戦から。
現在2山が枯れていて、25-25で同点の状態から、いま相手が4金で屋敷を買おうとしているところです。買えば25-26に。
よく見ると、公領があと2枚になっているのがわかるでしょうか。
こちらの手札はひどいもんで、このターンに何も買えないんですが、もしこのときの手札で5金出るとしたら、何も考えずに公領を買ってもいいんでしょうか。
買ったとして、点数は28-26にはなりますが、次に相手が5金を出したとしたら。最後の公領を買われて28-29になり、3山枯れで負けてしまいます。
そう、この状況もやはり「7枚目の属州問題」と同じく、相手にターンを回すと負けてしまう(かもしれない)状況のひとつです。
この状況は属州にだけ起こるわけではなく、他のカードでもそれが3山目で、それが枯れたらゲームが終わるのなら起こるわけです。
「相手にターンを回したら負ける状況がある」という思考を、属州以外のカードに向けてスライドさせることができるなら。ここでは公領を買いづらいな、と気付けるんだと思います。
打てないカードはなんですか
先ほどの場面から、この一つ前のターンの話をさせてください。
この前のターン、自分は属州を買って25-25に追いついたところです。つまり買う前は19-25で負けているという状況。
そのときの手札はこちら。
手札:
ここから打った玉座の間+家臣が、うまくもう1枚の玉座の間をめくってくれたため、これにより手札にあるもう1枚の家臣を2回プレイすることができました。これで8金に。
プレイ:+
さて、そもそもこの手札から玉座の間+家臣でなく、玉座の間+魔女と打つ選択肢もあったんですが、そちらはちょっと怖くて打てなかったんです。
なぜなら、サプライの呪いがあと3枚しかないからです。
打って呪い2枚を獲得させ(19-23になる)、サプライの呪いを残り1枚にしてしまうと、相手にゲームを終わらせる権利を譲ることになるからです。
玉座+魔女を打ったときの、購入したもの別の状況一覧:
こちらの購入 | 点数 | 公領 | 呪い | 状況 |
何も買えない | 19-23 | あと2枚 | あと1枚 |
相手に呪いを買われて負ける(確定) |
屋敷を買う | 20-23 | あと2枚 | あと1枚 |
相手に呪いを買われて負ける(確定) |
公領を買う | 22-23 | あと1枚 | あと1枚 |
・相手に公領を買われたら負ける ・相手に魔女を打たれ、屋敷を買われたら負ける |
実際、上の手札から玉座の間+魔女の4ドローで5金を出すことは難しく(銅銅銅銀を引いたときだけ)、公領を買う可能性を考える必要はほぼありません。呪い2枚を与え、屋敷が買えるかどうか。
つまり現在の6点差を3~4点差に縮めることしかできないのに、3山枯れ直前にしてしまうことに。
相手がこの点差と状況を理解しているなら、呪いを買ってゲームを終えるでしょう。
一を聞いて、いくつ知る
上で、7枚目の属州問題を6枚目にして考えたり、あるいは属州から公領に替えたりと、思考をスライドさせる例を書きましたが、こちらは「自分が勝利点カードを買うこと」から「相手に呪いを獲得させること」へのスライドです。
全然違う話に聞こえますが、実際には「相手にゲーム終了の権利を譲る」という点では同じことなんです。
ドミニオンをプレイしていて何かに気付いたり、人のプレイを見て新たな知識を得たり、あるいはどこかのブログを読んで戦略を学んだりしたとき、それをスライドすることで、得た知識の適用機会を何倍かにすることができます。
これができれば、6枚目の属州でも、7枚目の公領でも、9枚目の呪い撒きであっても、うっかりすることはなくなるんじゃないでしょうか。
今回書いたのは7枚目の属州問題ですが、スライドできるのはこれに限らず、他にも。なんでも。