「呪文」とか「いたずら」という意味らしいです
キャントリップ(cantrip)という言葉があります。
もともとは某カードゲームで使われていた用語らしいんですが、ドミニオンにおいては「+1アクション・+1カード」を得るアクションカードのことを指すようになりました。これも最初に導入したのは例の「ドミニオンレシピ」のようですが。
陰謀第二版までのキャントリップ以上のカード:
カード名 | 追加される効果など |
村 | さらに+1アクション |
前駆者 | 捨て札を1枚山札の上に置ける |
商人 | 後に銀貨プレイ時に+1金 |
密猟者 | +1金 |
市場 | +1金・+1購入 |
衛兵 | 山札2枚を見て廃棄・捨て札できる |
研究所 | さらに+1カード |
手先 | それ以外の効果も選択できる |
願いの井戸 | 山札を当てればもう+1カード |
隠し通路 | さらに+1カード、手札を1枚山札のどこかに置く |
風車 | 手札2枚を捨てれば+2金 |
鉱山の村 | さらに+1アクション、廃棄すれば+2金 |
改良 | 手札を1枚廃棄し、それよりコストが1高いカードを獲得 |
強いて言えば、3回目以降のアクションとしてプレイされる共謀者や、風車を獲得する鉄工所も「+1アクション・+1カード」が得られるため、条件付きのキャントリップと言えなくもないですね。あとキャントリップをめくったときの家臣とか。
さて本題です
たとえば前駆者。捨て札がゼロ枚のとき、特に得られるキャントリップ以外の効果はありませんが、キャントリップは別に入れても無駄にはならない、何の効果も得られなくても邪魔にはならない空気のようなカードとよく言われます。
手札:
山札:・・・
たとえばこんなデッキで、前駆者を打てば8金出ますが、この前駆者がなかったと仮定したとき、それ以外のカードのシャッフル後の順序が変わらないとすれば・・
手札:
山札:・・・
こうなっていたはずで、結果は変わりません。
キャントリップを打っても、手札枚数も残りアクション数も変わらないため、あってもなくても手札状況に変化はない、なので入れても無駄にはならない、という考えです。
さて、それって本当でしょうか。
手札:
例えばこんな手札を持つときに民兵を打たれたら、何を捨てるべきでしょうか。
なんとなく銅貨と屋敷を捨てるかな、と思えるんですが、そうした後に自ターンで前駆者を打った時、引いたカードが男爵だったらどうでしょう。
プレイ:
手札:+
屋敷を捨てなきゃよかった、と後悔しそうですよね。
もしもこの前駆者がデッキに入っておらず、それ以外のカードの順序が同じだったとしたら・・
手札:
前駆者1枚がない分、最初の手札の時点で男爵を持っていたはずです。
ここに民兵を打たれたのであれば、銅貨2枚を捨てますよね。
ではもう一例を。今度は最初から男爵を持っています。
手札:
ゲームは終盤。ここに民兵を打たれたら、何を捨てますか。
男爵を打ちたいため、銅貨2枚を捨てるんでしょうか。
仮に捨てたとして、前駆者で1ドローしたところ、引いたのが屋敷だったとしたら。
プレイ:
手札:+
4金しか出なくなってしまいました。
終盤で公領を買いたいのであれば、ここでは銅貨と前駆者を捨てるべきだったのかもしれません。それもいいんでしょうが、そうなると山札の上の屋敷は引かないまま、次のターンの手札に入ることになります。
極端な例ですが、もしも最初の手札と山札が以下のようになっていたとしたら。
手札:
山札:・・
銅貨2枚を捨て、このターンに1ドローをして屋敷を引いておけば、次のターンに8金出すことができますが、このターンは4金で終わりそうです。
あるいは銅貨と前駆者を捨てれば、このターンに5金を出すことができますが、次のターンに属州を買うことはできません。
さて、この例で、もしも前駆者がこのデッキに入っていなかったら。
手札:
山札:・・
ここで打たれた民兵に対して銅貨と屋敷を捨て、このターンは5金で公領を、次のターンには8金で属州を買うことができます。
空気カードは目隠しカード
上の2例における最初の手と、山札の一番上のカードをもう一度見てみましょう。
どちらも、山札の上のカードがなんであるかさえ見えていれば、民兵で捨てるべき2枚を正しく判断できるはずなんです。
そう、手札にキャントリップが1枚あるとき、手札は実質それ以外の4枚しか見えていないんです。
手札にキャントリップが多くあるほど、その分だけ目に見える実質手札が減り、民兵を打たれたときの判断が狂ってしまうんですよね。
手札:
山札:・・
極端な話、ここに民兵を打たれた場合、その後前駆者3枚を打ってどうなるかまったくわかりません(2金しか出ません)。この前駆者5枚がまったくなかったとすれば、手札は「屋屋銀金金」になっていたはずで、民兵を打たれても属州が買えたはずなんです。
出会うべきカードの邪魔になる
上では男爵と屋敷のペアが理想的に出会わなくなってしまう事例を書きましたが、他にも商人と銀貨や、金貸しと銅貨など、手札に揃うべきペアが揃うのか揃わないのか・それが確定しているのかいないのか、の判断をキャントリップによって鈍らせてしまうことが起こりえます。
以前に某所で「キャントリップ入れすぎると民兵に対して弱くなる」と話したところ、ぽかんとされたことがありますが、要するにこういうことでした。
キャントリップの功罪はこれ以外にもたくさんありますが、今回はとりあえず「民兵に弱い」という意味だけ伝わればいいかなと思いまして、こういう話でした。